とるちゅのおと

コトノハノチカラ

2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「鹿踊りのはじまり」について

この物語の語り部である「わたし」は、眠っているときにこの話を風から教えられたとしている。「狼森と笊森、盗人森」が岩手山の巖を介して語られたように、風が語ったことを「わたし」が読者に語るという二重構造になっている。 嘉十はおぢいさんたちととも…

「月夜のでんしんばしら」について

「子供」である恭一は、鉄道線路の横の平らなところをすたすた歩いている。月の光が確かに感じられるほど暗くなっているのに、そのような危険な線路沿いを、「あかり」によってまるで大きなお城にも見える停車場に向かって、すたすた歩いている。つかれても…

「かしはばやしの夜」について

この作品に描かれる出来事は、画かきの2つの叫び声、すなわち「鬱金しゃっぽのカンカラカンのカアン。」で始まり、「赤いしゃっぽのカンカラカンのカアン。」で終わる。かしわの木やふくろうの囃子が小気味良く、色彩の描写が印象的で、読後には音楽劇を鑑…

「山男の四月」について

本作品の題名は、当初童話集『注文の多い料理店』の題名として予定されていた。このことから、本作品と童話集『注文の多い料理店』に収録された「注文の多い料理店」が、主題において共通していることがわかる。 主人公の山男は、物語冒頭で山鳥を残忍なやり…

「烏の北斗七星」について

宮沢賢治は、生前に2つの著作を刊行した。1924年4月の心象スケッチ「春と修羅」の自費出版および同年12月の「烏の北斗七星」を含む9篇の童話を含む童話集「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」である。 この童話集の刊行に際しては大小二種の広告チラシが作…

「水仙月の四日」について

表題「水仙月の四日」とはどのような日であるのか。雪婆んごの立場から考えてみると、雪をたくさん降らせなければならない日であり、子どものひとりやふたりをこっち(雪婆んご側の世界)へとっていい日である。雪婆んご側の世界はあの世、遭難しかけている…