とるちゅのおと

コトノハノチカラ

日本文学:近代

「雪渡り」について

「雪渡り」は「キックキックトントン」などのリズミカルなオノマトペや、「堅雪かんこ凍み雪しんこ。狐の子ぁ嫁ぃほしいほしい」という「花いちもんめ」のような楽しい掛け合いが印象的な作品である。雪国育ちの人であれば、晴れた朝の通学路で、一枚の板に…

「やまなし」について

物語の冒頭、賢治はこの物語を「二枚の青い幻燈」だと紹介している。二枚に描かれた二つの場面には、それぞれ「一、五月」と「二、十二月」という題がつけられており、十二ヶ月の中から、五月と十二月の様子を切り取ったものだとわかる。では、なぜ五月と十…

童話集『注文の多い料理店』に込められた想い

童話集『注文の多い料理店』に収められた九篇に共通する特筆すべき特徴は、仏教信仰に基づく自然崇拝と自然との交感力に支えられた詩的な世界およびオノマトペを多用した特異な語り口といえる。 自然豊かな花巻市で育った賢治は、自然の優しさと厳しさについ…

「氷河鼠の毛皮」について

この作品は、大正十二年四月十五日に「岩手毎日新聞」に発表されたものである。掲載当時の時代背景から、この作品を「シベリア出兵の寓話」とする説もある。実際に賢治が物語の舞台設定において時代の空気から何らかの影響を受けていたであろうことは否定し…

「鹿踊りのはじまり」について

この物語の語り部である「わたし」は、眠っているときにこの話を風から教えられたとしている。「狼森と笊森、盗人森」が岩手山の巖を介して語られたように、風が語ったことを「わたし」が読者に語るという二重構造になっている。 嘉十はおぢいさんたちととも…

「月夜のでんしんばしら」について

「子供」である恭一は、鉄道線路の横の平らなところをすたすた歩いている。月の光が確かに感じられるほど暗くなっているのに、そのような危険な線路沿いを、「あかり」によってまるで大きなお城にも見える停車場に向かって、すたすた歩いている。つかれても…

「かしはばやしの夜」について

この作品に描かれる出来事は、画かきの2つの叫び声、すなわち「鬱金しゃっぽのカンカラカンのカアン。」で始まり、「赤いしゃっぽのカンカラカンのカアン。」で終わる。かしわの木やふくろうの囃子が小気味良く、色彩の描写が印象的で、読後には音楽劇を鑑…

「山男の四月」について

本作品の題名は、当初童話集『注文の多い料理店』の題名として予定されていた。このことから、本作品と童話集『注文の多い料理店』に収録された「注文の多い料理店」が、主題において共通していることがわかる。 主人公の山男は、物語冒頭で山鳥を残忍なやり…

「烏の北斗七星」について

宮沢賢治は、生前に2つの著作を刊行した。1924年4月の心象スケッチ「春と修羅」の自費出版および同年12月の「烏の北斗七星」を含む9篇の童話を含む童話集「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」である。 この童話集の刊行に際しては大小二種の広告チラシが作…

「水仙月の四日」について

表題「水仙月の四日」とはどのような日であるのか。雪婆んごの立場から考えてみると、雪をたくさん降らせなければならない日であり、子どものひとりやふたりをこっち(雪婆んご側の世界)へとっていい日である。雪婆んご側の世界はあの世、遭難しかけている…

「注文の多い料理店」について

宮沢賢治は、生前に2つの著作を刊行した。1924年4月の心象スケッチ「春と修羅」の自費出版および同年12月の「注文の多い料理店」を含む9篇の童話から成る童話集「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」である。 この童話集の刊行に際しては大小二種の広告チラ…

「狼森と笊森、盗人森」について

宮沢賢治は、生前に2つの著作を刊行した。1924年4月の心象スケッチ「春と修羅」の自費出版および同年12月の「狼森と笊森、盗森」を含む9篇の童話から成る童話集「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」である。 この童話集の刊行に際しては大小二種の広告チラ…

「どんぐりと山猫」」について

宮沢賢治は、生前に2つの著作を刊行した。1924年4月の心象スケッチ「春と修羅」の自費出版と同年12月の「どんぐりと山猫」をはじめとする9篇の童話を含む童話集「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」である。 この童話集の刊行に際しては大小二種の広告チラ…